特定技能「建設」の申請方法を完全ガイド|必要書類・JACの手続きまで解説
建設業界の深刻な人手不足を背景に、特定技能「建設」を活用して外国人材を採用する企業が急増しています。出入国在留管理庁の統計によると、建設分野の特定技能外国人は2025年末時点で約2.8万人に達し、前年比で約40%増加しました。
しかし、建設分野の特定技能は他の分野と比べて手続きが複雑です。通常の在留資格申請に加えて、JAC(一般社団法人建設技能人材機構)への登録や建設特定技能受入計画の認定申請など、建設分野独自の手続きが複数あるためです。
この記事では、特定技能「建設」の申請方法を全体フローから必要書類、JACの手続き、受入れ企業の要件、よくある失敗と対策まで、建設会社の経営者・採用担当者が知るべき全てを網羅的に解説します。初めて特定技能外国人の受入れを検討されている方にも、すでに技能実習生を受け入れていて特定技能への移行を考えている方にも役立つ内容です。
特定技能「建設」とは?制度の概要
特定技能とは、2019年4月に創設された在留資格で、人手不足が深刻な特定産業分野において、一定の専門性・技能を持つ外国人材の就労を認める制度です。建設分野は特定技能の14分野のうちの一つであり、特定技能1号と特定技能2号の両方が認められている分野です。
特定技能1号と2号の違い
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算5年まで | 上限なし(更新制) |
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験 | 熟練した技能 |
| 日本語能力 | N4以上 | 試験での確認なし |
| 家族の帯同 | 原則不可 | 配偶者・子の帯同可 |
| 支援計画 | 策定・実施が必須 | 不要 |
| 試験 | 建設分野特定技能1号評価試験 + 日本語試験 | 建設分野特定技能2号評価試験 |
特定技能2号は在留期間の上限がなく、家族帯同も可能なため、長期的に戦力となる外国人材の確保につながります。まずは1号で受け入れ、現場で経験を積んだ後に2号へステップアップする流れが一般的です。
建設分野で認められている業務区分
2022年の制度改正により、建設分野の業務区分は大幅に統合・拡大されました。現在は以下の3つの業務区分に整理されています。
- 土木:型枠施工、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、鉄筋施工、とび、海洋土木工 など
- 建築:型枠施工、左官、コンクリート圧送、屋根ふき、土工、鉄筋施工、とび、タイル張り、内装仕上げ など
- ライフライン・設備:電気通信、配管、建築板金、保温保冷 など
従来は19の細分化された区分でしたが、統合により同一区分内であれば幅広い作業に従事できるようになりました。これにより、現場のニーズに応じて柔軟に業務を任せることが可能になっています。
特定技能「建設」申請の全体フロー
建設分野で特定技能外国人を受け入れるまでの全体フローは、大きく6つのステップに分かれます。通常の特定技能申請に加え、建設分野独自の手続きが2つ(JACへの加入・建設特定技能受入計画の認定)入る点が特徴です。
- ステップ1:受入れ企業の要件確認・体制整備(建設業許可、CCUSなど)
- ステップ2:JAC(建設技能人材機構)への加入手続き
- ステップ3:外国人材の選定(試験合格者の採用 or 技能実習修了者からの移行)
- ステップ4:雇用契約の締結と1号特定技能外国人支援計画の策定
- ステップ5:建設特定技能受入計画の認定申請(国土交通省)
- ステップ6:在留資格の申請(出入国在留管理庁)
全体のスケジュールとしては、準備開始から外国人材が実際に就労を開始するまで、国内在住者の場合で約3〜4か月、海外から呼び寄せる場合で約5〜7か月が目安です。特に建設特定技能受入計画の認定に1〜2か月程度かかるため、余裕を持ったスケジュール設計が重要です。
申請に必要な書類一覧
特定技能「建設」の申請では、複数の機関に対してそれぞれ異なる書類を提出する必要があります。ここでは主要な書類を手続きごとに整理します。
建設特定技能受入計画の認定申請に必要な書類
国土交通省への認定申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 建設特定技能受入計画認定申請書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 雇用条件書の写し
- 建設業許可証の写し
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録証明
- JACの正会員団体への加入証明書 または JAC賛助会員の会員証
- 就業規則・賃金規程の写し
- 直近の労働保険・社会保険の加入を証する書類
- 直近1年分の賃金台帳(日本人の同等技能者との同等報酬を証明)
- 特定技能外国人の報酬額が日本人と同等以上であることの説明書
- ハローワークの求人票の写し(国内人材確保の努力を証明)
- 安全衛生教育計画書
在留資格申請(出入国在留管理庁)に必要な主な書類
在留資格認定証明書交付申請(海外から招聘する場合)または在留資格変更許可申請(国内在住者の場合)に必要な書類です。
- 在留資格認定証明書交付申請書 または 在留資格変更許可申請書
- 特定技能雇用契約書の写し
- 1号特定技能外国人支援計画書
- 建設特定技能受入計画の認定通知書の写し
- 特定技能外国人の履歴書・パスポートの写し
- 特定技能評価試験の合格証明書 または 技能実習2号修了証明書
- 日本語能力試験の合格証明書(N4以上)
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 決算報告書の写し(直近2期分)
- 納税証明書(法人税・消費税・住民税)
- 健康保険・厚生年金保険の加入証明書類
- 登録支援機関との支援委託契約書の写し(委託する場合)
書類の数が多いため、チェックリストを作成して漏れなく準備することが重要です。書類に不備があると審査が差し戻しとなり、受入れ時期が大幅に遅れる原因になります。
JAC(建設技能人材機構)の手続きを詳しく解説
建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合、JAC(一般社団法人建設技能人材機構)に関する手続きは避けて通れません。JACは国土交通省の告示に基づき、建設分野の特定技能制度を適正に運用するために設立された機関です。
JACへの加入方法(2つのルート)
受入れ企業がJACに関わる方法は2つあります。
| 加入方法 | 概要 | 年会費 | 適している企業 |
|---|---|---|---|
| ルート1:正会員団体経由 | JACの正会員である建設業者団体(全建、日建連など41団体)に加入し、その団体を通じてJACの仕組みを利用する | 所属団体の会費による(団体によって異なる) | すでにいずれかの建設業者団体に加入している企業 |
| ルート2:JAC賛助会員 | JACに直接賛助会員として加入する | 年額24万円 | 正会員団体に加入していない企業、中小規模の建設会社 |
すでに全国建設業協会(全建)や日本建設業連合会(日建連)などの団体に加入している場合は、ルート1が追加費用を抑えられます。どちらの団体にも加入していない場合は、ルート2のJAC賛助会員が手続きとしてはシンプルです。
JAC賛助会員の加入手順
JAC賛助会員への加入手順は以下の通りです。
- 手順1:JACの公式サイトから「特定技能受入事業者 事前巡回申込書」を提出
- 手順2:JACによる事前巡回の実施(現場の安全衛生体制、受入れ体制の確認)
- 手順3:賛助会員入会申込書の提出
- 手順4:JAC理事会での承認(月1回開催)
- 手順5:入会承認の通知・年会費の納入
事前巡回からJAC理事会での承認まで、約1〜2か月かかります。特に理事会は月1回の開催のため、タイミングによっては承認が翌月に持ち越される可能性があります。早めの申込みが重要です。
受入負担金について
JACの加入に加え、特定技能外国人を実際に受け入れた後は受入負担金が毎月発生します。
| 区分 | 月額 | 備考 |
|---|---|---|
| 正会員団体経由で受入れ | 12,500円/人 | 海外試験の実施費用等に充当 |
| 賛助会員として受入れ | 20,000円/人 | 正会員団体経由より割高 |
受入負担金は外国人材を雇用している間、毎月発生するランニングコストです。複数人を長期的に受け入れる予定がある場合は、正会員団体に加入した方がトータルコストで有利になる可能性があります。
受入れ企業が満たすべき要件
建設分野で特定技能外国人を受け入れるためには、一般的な特定技能の要件に加えて、建設分野独自の要件を満たす必要があります。事前に自社の状況を確認しておきましょう。
必須要件チェックリスト
- 建設業許可を取得していること -- 建設業法に基づく建設業許可(一般または特定)が必要です。許可を持っていない場合は、まず許可の取得から始める必要があります。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)に事業者登録していること -- 特定技能外国人もCCUSへの技能者登録が必要であり、そのためには受入れ企業側の事業者登録が前提です。
- JACの正会員団体に加入 または JAC賛助会員であること -- 前述の通り、いずれかのルートでJACに関わっている必要があります。
- ハローワークで日本人の求人を行っていること -- 国内人材の確保に向けた努力を行っていることの証明として、ハローワークへの求人申込みが求められます。
- 特定技能外国人と同等の技能を有する日本人と同等以上の報酬を支払うこと -- 月額報酬の比較だけでなく、賞与や各種手当を含めた年間総報酬で同等以上であることが求められます。
- 月給制で報酬を支払うこと -- 建設分野では日給制は認められません。安定した報酬を保障するために月給制が必須です。
- 1号特定技能外国人の数が常勤職員の総数を超えないこと -- 例えば、日本人の常勤職員が10名の会社であれば、1号特定技能外国人は最大10名まで受入れ可能です。
- 労働関係法令・社会保険関係法令を遵守していること -- 過去に法令違反がある場合、受入れが認められないことがあります。
- 建設特定技能受入計画の認定を受けること -- 国土交通省による審査・認定が必要です。
特に注意が必要なのは「同等報酬の証明」です。単に「月給○○万円」と記載するだけでは不十分で、同等の技能・経験を有する日本人従業員の賃金台帳と比較して、合理的な説明ができる資料を準備する必要があります。同等の日本人がいない場合は、賃金規程等に基づいた報酬決定の合理性を説明しなければなりません。
申請スケジュールの目安
特定技能「建設」の申請は複数の手続きが関わるため、スケジュール管理が成否を分けます。以下に国内在住者を採用する場合のモデルスケジュールを示します。
| 時期 | 手続き内容 | 所要期間の目安 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 受入れ要件の確認、JAC加入申込み、CCUS事業者登録 | 2〜4週間 |
| 1〜2か月目 | JACの事前巡回・理事会承認、外国人材の選定・面接 | 3〜6週間 |
| 2〜3か月目 | 雇用契約締結、支援計画策定、建設特定技能受入計画の認定申請 | 4〜8週間 |
| 3〜4か月目 | 在留資格変更許可申請、審査・許可 | 2〜4週間 |
| 4か月目〜 | 就労開始、CCUS技能者登録 | -- |
海外から呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書の交付後にビザ申請・渡航手配が加わるため、さらに1〜3か月程度長くなります。
各ステップが前後に依存しているため、一つの手続きの遅れが全体のスケジュールに波及します。特にJACの理事会承認(月1回)と建設特定技能受入計画の認定(審査に4〜8週間)はボトルネックになりやすいため、最優先で着手しましょう。
よくある失敗と対策
特定技能「建設」の申請では、経験豊富な企業でも陥りがちな失敗があります。以下の6つのポイントを事前に把握しておくことで、スムーズな申請が可能になります。
失敗1:同等報酬の証明が不十分
最も多い不備の一つが、日本人と同等以上の報酬であることの証明です。「経験3年の日本人技能者と同じ給与にした」と口頭で説明しても認められません。賃金台帳や給与テーブルで客観的に比較できる資料を準備し、報酬の決定根拠を明確に説明する書面を添付しましょう。
失敗2:JACの加入手続きの着手が遅い
JAC賛助会員の承認は理事会(月1回)で行われるため、申込みのタイミングが悪いと1か月以上のロスが生じます。外国人材を採用すると決めたら、候補者の選定と並行して、最優先でJACの加入手続きに着手してください。
失敗3:CCUSの事業者登録が未完了
建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録は、建設特定技能受入計画の認定申請の前提条件です。CCUS登録自体に2〜3週間かかることがあるため、これも早めに済ませておきましょう。
失敗4:ハローワークへの求人を忘れる
建設特定技能受入計画の認定要件として、ハローワークで求人を行っていることが求められます。「外国人しか応募がない」という状況であっても、制度上はハローワークでの求人実績が必要です。申請前に必ず求人票を提出し、その写しを保管しておいてください。
失敗5:支援計画の策定が形式的
1号特定技能外国人に対する支援計画は10項目の義務的支援を含む必要がありますが、テンプレートをそのまま提出して不備を指摘されるケースがあります。自社の実態に合った具体的な支援内容(日本語教育の方法、相談体制、住居のサポートなど)を記載しましょう。自社での支援が難しい場合は、登録支援機関への委託を検討してください。
失敗6:月給制への移行が間に合わない
建設分野では日給制・出来高制による報酬支払いは認められず、月給制が必須です。自社の賃金体系が日給制の場合、就業規則・賃金規程の改定が必要になります。規程の改定には社内手続き(従業員への周知・意見聴取)も伴うため、時間に余裕を持って対応しましょう。
申請にかかる費用の目安
特定技能「建設」の申請に関連して発生する主な費用をまとめます。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| JAC賛助会員年会費 | 24万円/年 | 正会員団体経由の場合は団体の会費による |
| 受入負担金 | 12,500〜20,000円/人・月 | 正会員団体経由か賛助会員かで異なる |
| CCUS事業者登録料 | 0円〜240万円 | 資本金額に応じて変動。個人事業主は0円 |
| CCUS技能者登録料 | 2,500円/人 | 簡略型の場合。詳細型は4,900円 |
| 人材紹介手数料 | 20〜40万円/人 | 紹介会社を利用する場合 |
| 登録支援機関への委託費 | 2〜3.5万円/人・月 | 支援を外部委託する場合 |
| 行政書士報酬(任意) | 10〜20万円/件 | 在留資格申請の代行を依頼する場合 |
| 在留資格申請の収入印紙代 | 4,000円 | 在留資格変更の場合。認定証明書交付は無料 |
行政書士に在留資格申請を依頼する場合は10〜20万円程度の報酬が別途かかりますが、書類の不備による差し戻しリスクを大幅に減らせるため、初めての申請では専門家への依頼を推奨します。
まとめ:特定技能「建設」の申請を成功させるために
特定技能「建設」の申請は手続きが多岐にわたりますが、全体フローと各ステップのポイントを事前に把握しておけば、着実に進めることができます。この記事の要点を最後に整理します。
- 建設分野は他の特定技能分野と比べ、JAC加入と建設特定技能受入計画の認定という独自手続きがある
- 申請には建設業許可、CCUS登録、JAC加入の3つが前提条件
- 必要書類は多岐にわたるため、チェックリストを活用して漏れなく準備する
- JACの理事会承認(月1回)がボトルネックになりやすいため、加入手続きは最優先で着手
- 同等報酬の証明は客観的な資料(賃金台帳・給与テーブル)で裏付ける
- 国内在住者の採用で約3〜4か月、海外からの招聘で約5〜7か月のスケジュールを見込む
- 初めての申請では、行政書士や登録支援機関など専門家のサポートを活用することで不備を防げる
建設業の人手不足が深刻化する中、特定技能外国人の活用は今後ますます重要になります。制度を正しく理解し、適切な手続きを行うことで、優秀な外国人材を確保し、自社の現場力を強化していきましょう。申請手続きに不安がある方は、まずは専門家への無料相談をご活用ください。