型枠大工の人手不足は深刻|採用成功のための5つの対策
型枠大工は、鉄筋コンクリート造の建築物を支える根幹の職種です。コンクリートを流し込むための型枠を設計・加工・組立・解体する専門技術は、マンション・オフィスビル・橋梁・トンネルなど、あらゆるRC構造物に不可欠です。
しかし今、この型枠大工が深刻な人手不足に陥っています。「求人を出しても応募が来ない」「ベテランが引退して現場が回らない」「工期に間に合わない」――こうした声は、もはや一部の企業だけの問題ではありません。
本記事では、型枠大工の人手不足の現状をデータで正確に把握した上で、その根本原因を分析し、採用を成功させるための5つの具体的な対策を解説します。型枠工事を手がける専門建設会社の経営者・採用担当者の方は、ぜひ最後までお読みください。
型枠大工の人手不足の現状 ―― データで見る深刻度
型枠大工を含む建設業全体の人手不足は、もはや「慢性的」という言葉では表しきれないレベルに達しています。まずは具体的なデータで現状を確認しましょう。
有効求人倍率:建設業は全産業平均の約7倍
厚生労働省の統計によると、建設業における型枠工を含む躯体工事関連職種の有効求人倍率は9倍を超える水準で推移しています。これは全産業平均の約7倍にあたり、「求人を出しても人が来ない」状態が常態化していることを意味します。
特に型枠大工は専門性が高く、一人前になるまでに最低でも3〜5年の経験が必要とされるため、他の建設職種と比較しても採用の難易度が際立っています。未経験者を即戦力として現場に投入することが難しく、「経験者しか採れない、でも経験者がいない」というジレンマに多くの企業が直面しています。
高齢化率:建設業就業者の36%が55歳以上
国土交通省の建設業動態統計によると、建設業就業者の約36%が55歳以上です。一方で29歳以下の若年層はわずか12%程度にとどまっています。型枠大工に限れば、この高齢化比率はさらに顕著であると推測されます。
今後10年間で、現在の熟練型枠大工の大半が引退を迎えます。仮に毎年一定数の新規入職者を確保できたとしても、引退する人数を補うことは到底できません。いわば「静かなる人材危機」が、すでに進行しているのです。
若年入職者の減少:建設業を選ばない若者たち
総務省の労働力調査によれば、建設業への新規入職者数は1990年代のピーク時から大幅に減少しています。若年層にとって建設業は「きつい・汚い・危険」というイメージが根強く、IT・サービス業など他業種との人材獲得競争で後れを取っているのが現実です。
さらに、少子化による労働力人口そのものの減少が重なり、建設業が若者を獲得する難易度は年々上昇しています。型枠大工という職種を知らない若者も多く、そもそも「選択肢に入っていない」ことが最大の課題ともいえます。
型枠工の賃金水準:平均日給は約30,214円
国土交通省が毎年公表する公共工事設計労務単価によると、型枠工の全国平均日当は約30,214円(2025年度)です。これは建設業の職種別でも上位に位置し、鉄筋工やとび工と比較しても遜色のない水準です。
しかし、この賃金水準をもってしても人手不足が解消されていないという事実は、問題の根深さを物語っています。賃金だけでは解決できない構造的な課題が存在するのです。
型枠大工が不足する3つの根本原因
型枠大工の人手不足は、単に「求人が足りない」「給料が安い」といった表面的な理由だけでは説明できません。ここでは、不足を引き起こしている3つの根本原因を掘り下げます。
原因1:熟練工の高齢化と大量引退
前述の通り、建設業就業者の36%が55歳以上であり、型枠大工も例外ではありません。1970〜80年代の建設ラッシュ期に入職した世代が現在の主力を担っていますが、この世代が今後5〜10年で一斉に現場を離れます。
型枠大工の技術は、図面を読み解き、木材やコンパネを正確に加工し、寸分の狂いなく組み上げるという、長年の経験に裏打ちされた職人技です。この技術の伝承には時間がかかるため、ベテランが引退してから慌てて育成を始めても間に合いません。
技術伝承の断絶こそが、型枠大工の人手不足における最も深刻な問題です。人数の減少だけでなく、「質の低下」というリスクも同時に進行しているのです。
原因2:3Kイメージと職業認知度の低さ
建設業は依然として「きつい・汚い・危険」のいわゆる3Kイメージがつきまとっています。実際に型枠大工の仕事は、重い型枠材の運搬、高所での組立作業、真夏の炎天下や真冬の屋外での作業など、体力的に厳しい面があるのは事実です。
しかし、近年は安全対策の強化、軽量型枠の導入、現場環境の改善など、労働環境は着実に向上しています。問題は、こうした改善の実態が求職者に正しく伝わっていないことです。
また、そもそも「型枠大工」という職業自体を知らない若者が大半です。進路指導の場で建設業の職種が紹介されることは稀であり、職業としての認知度・理解度が極端に低いことが、入職者の減少に直結しています。
原因3:待遇と労働環境の課題
型枠工の平均日給は約30,214円と決して低くはありませんが、建設業特有の課題も依然として存在します。
- 天候による休工リスク:雨天や台風で作業ができず、日給制の場合は収入が不安定になる
- 社会保険の未加入問題:一人親方や小規模事業者では社会保険に未加入のケースがあり、将来の保障に不安が残る
- 週休2日の未達:建設業の週休2日実施率はまだ低く、4週6休や4週5休の現場も多い
- キャリアパスの不透明さ:「職長になったら次は何を目指すのか」が見えにくい
他業種と比較したときに、安定性・休日数・キャリアの見通しという点で見劣りすることが、特に若年層の入職を妨げる要因となっています。
型枠大工の採用を成功させる5つの対策
ここからは、型枠大工の採用を成功に導くための5つの具体的な対策を解説します。いずれも「明日から取り組める」実践的な内容です。
対策1:待遇改善 ―― 日当30,000円時代の給与設計
採用において最も基本的かつ効果的な施策は、やはり待遇の改善です。型枠工の公共工事設計労務単価が全国平均で約30,214円に達している今、この水準に見合った給与を実際に支払えているかどうかが、採用力を大きく左右します。
具体的に取り組むべきポイントは以下の通りです。
- 日給の見直し:地域の相場を調査し、最低でも同水準、可能であれば上回る日給を設定する。経験者には日給32,000〜35,000円以上を提示できると競争力が高まる
- 月給制の導入検討:天候による収入変動をなくす月給制は、求職者にとって大きな安心材料になる。「月給45万円〜」のように月額で提示することで、他業種からの転職組にもわかりやすい
- 社会保険の完備:健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の加入は当然として、退職金制度(建退共など)の導入も訴求ポイントになる
- 賞与・手当の整備:資格手当(型枠施工1級・2級)、職長手当、現場手当、通勤手当など、基本給以外の処遇を明確化する
- 週休2日の推進:国土交通省が進める建設業の週休2日推進に対応し、4週8閉所を目指す。「休めるから選ばれる」会社になることが重要
待遇改善は採用コストの増加に直結しますが、人が来なければ工事を受注しても施工できません。「人件費」ではなく「人材への投資」として捉え、経営判断として取り組むべきです。
対策2:外国人材の活用 ―― 技能実習・特定技能の戦略的導入
国内の日本人労働力だけで型枠大工の不足を補うことは、現実的には困難です。外国人材の活用は、もはや「検討すべきオプション」ではなく、多くの型枠工事会社にとって経営上の必須戦略になりつつあります。
建設業で外国人を受け入れるための主な在留資格は以下の通りです。
| 制度 | 在留期間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 技能実習(1号〜3号) | 最長5年 | 未経験者の育成が可能。監理団体を通じて受入れ |
| 特定技能1号 | 最長5年 | 即戦力人材。試験合格または技能実習2号修了が要件 |
| 特定技能2号 | 無期限(更新制) | 熟練技能者。家族帯同可。長期戦力として期待 |
型枠施工は、技能実習の対象職種であり、特定技能「建設」の業務区分にも含まれています。技能実習で入国した外国人が経験を積み、特定技能1号、さらに2号へとステップアップするキャリアパスを企業側が明確に示すことで、優秀な人材の確保と定着が期待できます。
外国人材の受入れにあたっては、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が必須です。CCUSは技能者の資格・経験を一元管理するシステムで、外国人技能者のキャリア形成にも活用されています。
なお、2027年4月には現行の技能実習制度に代わる育成就労制度が施行されます。転籍(転職)の柔軟化など大きな変更があるため、今から制度の理解を深め、対応準備を進めておくことが重要です。
外国人材の受入れは、信頼できる監理団体・登録支援機関を選ぶことが成否を分けます。建設業、特に型枠工事の受入れ実績が豊富なパートナーを選定しましょう。
対策3:求人媒体の見直し ―― 建設特化型サービスの活用
「ハローワークに求人を出しているが、まったく応募が来ない」――これは多くの型枠工事会社が抱える共通の悩みです。大手総合求人サイトに掲載しても、建設業の求人は他業種の求人に埋もれてしまい、ターゲットとなる経験者の目に留まりにくいのが実情です。
求人媒体を見直す際のポイントを整理します。
- 建設業特化型の求人サイトを活用する:建設業界に特化した求人プラットフォームでは、型枠大工を探している求職者にダイレクトにリーチできる。職種で絞り込んだ検索が可能なため、マッチング精度が高い
- Indeed・求人ボックスなどの検索エンジン型媒体を併用する:「型枠大工 求人 (地域名)」で検索するユーザーを直接取り込める。SEO的な求人票の書き方が重要
- 求人票の内容を充実させる:「型枠工事一式」ではなく、具体的な仕事内容・現場の種類・1日の流れ・先輩の声などを盛り込む。写真や動画があると応募率が大きく向上する
- 自社ホームページに採用ページを設ける:求人媒体で興味を持った求職者は、必ず会社のWebサイトを確認する。採用ページがない、または情報が古いと、その時点で離脱される
複数の媒体を組み合わせ、どの媒体から応募が来ているかをデータで把握することが、採用コストの最適化につながります。
対策4:若年層へのアプローチ ―― SNS・動画を活用した採用ブランディング
型枠大工の将来を考えたとき、若年層の入職を増やすことは避けて通れない課題です。しかし、従来型の求人広告だけでは若者にリーチすることは困難です。若者が日常的に接触するメディアを活用した採用ブランディングが必要になります。
SNS活用のポイント
- Instagram:現場の写真、完成した建物の写真、職人の作業風景などビジュアルで訴求。ハッシュタグ「#型枠大工」「#建設業」「#職人の仕事」などで検索流入を狙う
- TikTok:型枠の組立・解体の作業工程を短尺動画で紹介。「職人技」系のコンテンツは若者の間で人気が高く、バズる可能性がある
- YouTube:「型枠大工の1日密着」「未経験から型枠大工になるまで」などの長尺コンテンツで、仕事の魅力とリアルを発信
動画コンテンツで伝えるべきこと
- 型枠大工の仕事の全体像(何を作っているのか、社会にどう貢献しているのか)
- 日給や月収のリアルな数字(「型枠大工は稼げる」を具体的に示す)
- 未経験からのキャリアステップ(見習い→一人前→職長→独立、という道筋)
- 先輩職人のインタビュー(やりがい、大変なこと、この仕事を選んだ理由)
- 現場の雰囲気や仲間との関係性(人間関係の良さは若者にとって重要な判断材料)
SNS・動画活用は短期的に応募数を爆増させるものではありませんが、「型枠大工」という仕事の存在を知ってもらい、興味を持ってもらうという入口を広げる効果があります。中長期的な採用基盤の構築として取り組む価値は十分にあります。
また、建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用し、技能レベルに応じたキャリアパスを可視化することも、若年層にとっての魅力発信につながります。CCUSでは、経験年数・保有資格・就業日数に基づいてレベル1〜4の評価が行われ、レベルに応じた処遇改善が推奨されています。「頑張った分だけ正当に評価される仕組みがある」ことを伝えましょう。
対策5:採用マッチングサービスの活用
ここまで紹介した対策は、いずれも自社で継続的に取り組む必要があるものです。しかし、現場を回しながら採用活動にまで手が回らないというのが、多くの型枠工事会社の本音ではないでしょうか。
そこで検討すべきなのが、建設業に特化した採用マッチングサービスの活用です。
採用マッチングサービスの主なメリットは以下の通りです。
- 専門のアドバイザーが採用条件を整理:自社の強み・弱みを客観的に分析し、求職者に刺さる求人内容を一緒に作り上げてくれる
- 非公開の求職者データベースにアクセス:一般の求人サイトには掲載されていない、転職を検討中の型枠大工とマッチングできる可能性がある
- 採用のミスマッチを減少:事前のヒアリングで企業と求職者の条件をすり合わせるため、「入社後すぐに辞められた」というリスクを低減できる
- 成功報酬型で初期コストを抑制:採用が決定するまで費用が発生しないサービスもあり、掲載費用だけがかかり続けるリスクを回避できる
特に、日本人の型枠大工経験者の採用だけでなく、外国人材の紹介も併せて行えるワンストップ型のサービスを選ぶことで、採用チャネルを最大化できます。
複数の採用手法を自社だけで管理するのは負担が大きいため、「自社でやるべきこと」と「外部に任せること」を切り分けることが、限られたリソースの中で採用を成功させるための現実的な戦略です。
まとめ:型枠大工の採用は「待ち」から「攻め」へ
型枠大工の人手不足は、高齢化・3Kイメージ・待遇課題という3つの構造的な原因が複合的に絡み合っており、短期間で解消される見込みはありません。しかし、だからこそ今すぐ行動を起こした企業が、採用市場で優位に立てるのです。
本記事で紹介した5つの対策を改めて整理します。
- 対策1:待遇改善 ―― 日当30,000円時代にふさわしい給与設計・月給制導入・福利厚生の充実
- 対策2:外国人材の活用 ―― 技能実習・特定技能を戦略的に導入し、CCUSを活用したキャリアパスを構築
- 対策3:求人媒体の見直し ―― 建設特化型サービスの活用とデータに基づく媒体選定
- 対策4:若年層へのアプローチ ―― SNS・動画を活用した採用ブランディングで「認知」から「興味」へ
- 対策5:マッチングサービスの活用 ―― 専門アドバイザーの力を借りてマッチング精度を向上
すべてを一度に実行する必要はありません。まずは自社の状況に合った対策から1つずつ始め、PDCAを回しながら改善していくことが重要です。
型枠大工の人手不足は、建設業界全体の課題であると同時に、個々の企業が自社の採用力を高めることで打開できる課題でもあります。「求人を出して待つ」だけの時代は終わりました。攻めの採用戦略で、御社に必要な型枠大工を確保しましょう。