技能実習生の受け入れの流れ|建設業が知っておくべき手順と期間を徹底解説
建設業で外国人技能実習生を受け入れたいと考えたとき、「具体的にどのような手順で進めればいいのか」「どれくらいの期間がかかるのか」がわからず、最初の一歩を踏み出せない企業は少なくありません。
技能実習生の受入れは、監理団体の選定から実習開始まで約6〜8か月のプロセスがあり、それぞれのステップで必要な書類・手続き・注意点が異なります。特に建設業は、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録義務やJACへの加入など、他業種にはない独自の要件も存在します。
この記事では、建設業における技能実習生の受入れの流れを8つのステップに分けて、時系列でわかりやすく解説します。各ステップにかかる期間の目安や、よくある失敗パターンと対策も併せて紹介しますので、初めての受入れを検討されている企業様はぜひ参考にしてください。
技能実習生の受入れ|全体の流れと期間の目安
技能実習生の受入れは、大きく分けて8つのステップで進みます。まずは全体像を把握しましょう。以下の表に、各ステップの概要と所要期間をまとめています。
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 監理団体の選定・契約 | 2週間〜1か月 |
| 2 | 送出し機関との連携・人材募集 | 2週間〜1か月 |
| 3 | 面接・選考 | 1〜2週間 |
| 4 | 技能実習計画の作成・認定申請 | 1〜2か月 |
| 5 | 在留資格認定証明書の取得 | 1〜2か月 |
| 6 | ビザ取得・渡航準備 | 2週間〜1か月 |
| 7 | 入国後講習 | 約1か月 |
| 8 | 実習開始 | -- |
全体を通して最短で約6か月、一般的には7〜8か月を見込んでおくのが現実的です。書類の不備や申請時期によってはさらに時間がかかるケースもあるため、余裕をもったスケジュール設定が重要です。
ステップ1:監理団体の選定・契約(2週間〜1か月)
技能実習生を受け入れるための最初のステップは、監理団体の選定です。団体監理型の技能実習では、企業が直接外国人を受け入れるのではなく、監理団体を通じて受入れを行うのが基本的な仕組みです。
監理団体は全国に約3,750以上ありますが、建設業に精通した団体は限られます。選定の際に確認すべき主なポイントは以下の通りです。
- 建設業での受入れ実績:自社の職種(型枠・鳶・鉄筋・内装仕上げ等)での実績があるか
- 対応エリア:自社の施工範囲をカバーしているか
- 費用の透明性:月額管理費(相場は2.5万〜5万円/人)以外の隠れコストがないか
- トラブル対応力:24時間対応の緊急連絡先、母国語対応スタッフの有無
- 行政処分歴:外国人技能実習機構(OTIT)の公表情報で確認
複数の監理団体から見積もりを取り、面談を行ったうえで契約先を決定します。この段階で妥協すると、後々のトラブルにつながるため、慎重に比較検討しましょう。
建設業特有の確認事項
建設業で技能実習生を受け入れる場合、他業種にはない特有の手続きがあります。監理団体がこれらに対応可能かを必ず確認してください。
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への事業者登録・技能者登録のサポート
- 一般社団法人建設技能人材機構(JAC)への加入手続き
- 建設分野の特定技能への移行を見据えたサポート体制
ステップ2:送出し機関との連携・人材募集(2週間〜1か月)
監理団体が決まったら、次は海外の送出し機関と連携して人材の募集を行います。送出し機関とは、技能実習生の母国側で候補者の募集・教育・送出しを行う現地の法人です。
建設業の技能実習生の主な送出し国は以下の通りです。
- ベトナム:建設業の技能実習生で最も多い送出し国。日本語学習者も多く、比較的スムーズに候補者が集まる
- インドネシア:真面目な国民性が評価され、建設業での需要が増加中
- ミャンマー:近年送出し数が急増。送出し費用が比較的安い
- フィリピン:英語力が高く、コミュニケーション能力に優れる
送出し国の選定は、監理団体と相談のうえ決定するのが一般的です。自社の現場環境や既に受け入れている外国人の国籍との相性なども考慮しましょう。
募集時には、企業側から以下の情報を送出し機関に提示します。
- 募集人数・職種・作業内容
- 実習期間(通常3年、優良認定を受けた場合は最大5年)
- 給与・待遇・福利厚生
- 宿舎の条件
- 求める経験・スキル・年齢の目安
ステップ3:面接・選考(1〜2週間)
送出し機関が募集した候補者の中から、面接・選考を行います。面接は現地に渡航して対面で行う方法と、オンラインで行う方法があります。
面接の方法
- 現地面接:実際に送出し国を訪問し、候補者と直接面談。候補者の人柄や体格を直接確認でき、送出し機関の運営状況も把握できるメリットがある
- オンライン面接:Zoom等を使用した遠隔面接。渡航コストを抑えられる一方、実技試験の実施が難しいデメリットがある
建設業の面接で確認すべきポイント
建設業は体力を要する現場作業が中心です。以下の点を重点的に確認しましょう。
- 体力・健康状態:高所作業や重量物の取り扱いに耐えられるか。健康診断書の確認
- 実技テスト:簡単な作業テスト(工具の使い方、力仕事の適性など)を実施する企業もある
- 日本語の基礎力:安全指示の理解が命に直結するため、最低限のコミュニケーション能力が必要
- 来日の動機・意欲:5年間の実習を完遂する意志があるか
- 母国での職歴:建設関連の経験があればなお望ましい
面接後、合格者が決まったら雇用契約を締結します。この雇用契約は日本の労働基準法に基づく内容でなければなりません。
ステップ4:技能実習計画の作成・認定申請(1〜2か月)
面接・選考が完了したら、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構(OTIT)に認定申請を行います。技能実習計画とは、実習の目標、内容、期間、指導体制などを定めた計画書であり、認定を受けなければ技能実習を開始できません。
技能実習計画に記載する主な内容
- 技能実習の目標(技能検定の合格等)
- 実習の内容・スケジュール
- 実習を行う事業所の概要
- 技能実習指導員・生活指導員の配置
- 技能実習生の待遇(給与・労働時間・休日・宿舎等)
- 安全衛生に関する措置
建設業で必要な追加書類
建設業の技能実習計画認定申請では、以下の建設業特有の書類も必要になります。
- 建設業許可証の写し
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)の事業者登録証明
- JAC(建設技能人材機構)への加入を証する書類
- 建設現場における安全衛生管理体制の説明資料
- 元請企業との関係を示す書類(施工体制台帳等)
技能実習計画の作成は監理団体がサポートしてくれますが、企業側で用意すべき情報や書類も多いため、早めに準備を始めましょう。OTITの審査には通常1〜2か月かかります。書類の不備があると差戻しとなり、さらに時間がかかる点に注意が必要です。
ステップ5:在留資格認定証明書の取得(1〜2か月)
技能実習計画の認定を受けたら、次は在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行います。これは出入国在留管理庁(入管)に対して行う手続きで、技能実習生が日本に入国するために必要な書類です。
申請は監理団体が代理で行うのが一般的です。申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 技能実習計画認定通知書の写し
- 技能実習生の顔写真・パスポートの写し
- 監理団体の許可証の写し
- 受入れ企業の登記簿謄本・決算書
入管の審査期間は1〜2か月程度ですが、申請が集中する時期(4月入国に向けた1〜2月など)は審査に時間がかかる傾向があります。計画的なスケジューリングが重要です。
ステップ6:ビザ取得・渡航準備(2週間〜1か月)
在留資格認定証明書が交付されたら、その原本を送出し機関経由で技能実習生本人に送付します。技能実習生は母国の日本大使館・領事館でビザ(査証)の申請を行い、通常1〜2週間で発給されます。
この期間中に、受入れ企業側では以下の準備を進めます。
- 宿舎の確保:1人あたり4.5平米以上の居室面積が必要。家賃は実費を上限として実習生から徴収可能
- 生活必需品の準備:寝具・調理器具・自転車など、最低限の生活用品を整備
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への技能者登録の準備
- 安全装備の準備:ヘルメット・安全帯・作業着・安全靴など現場で必要な装備一式
- 現場受入れ体制の整備:技能実習指導員・生活指導員の選任、既存社員への周知
ビザが発給されたら、渡航日を調整し、日本への入国となります。空港への出迎えは監理団体が行うケースが一般的です。
ステップ7:入国後講習(約1か月)
入国した技能実習生は、実習先の企業で働き始める前に入国後講習を受講します。この講習は法律で義務付けられており、期間は原則として1か月以上(技能実習1号の活動予定時間の6分の1以上)です。
入国後講習の内容
- 日本語教育:日常会話だけでなく、現場で使う専門用語や安全指示に関する日本語
- 日本での生活に関するオリエンテーション:交通ルール、ゴミの分別、病院の利用方法、銀行口座の開設等
- 法的保護講習:労働関係法令、入管法、技能実習法に関する権利・義務の説明。行政書士等の外部講師が担当
- 建設業特有の安全衛生教育:建設現場での危険予知(KY)活動、安全帯の使い方、熱中症対策など
入国後講習の期間中、技能実習生は企業での実習活動(業務)を行うことはできません。ただし、この期間の生活費(講習手当)は受入れ企業が負担します。一般的な講習手当の相場は月額5万〜7万円程度です。
講習は監理団体が運営する研修施設で実施されるのが一般的ですが、外部の日本語学校等に委託するケースもあります。
ステップ8:実習開始 -- ここからが本番
入国後講習が修了したら、いよいよ実習開始です。技能実習生は受入れ企業の社員と同様に労働基準法が適用される「労働者」として、現場での実習に従事します。
実習開始時に行うべきこと
- 雇用保険・社会保険への加入手続き
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への技能者登録の完了
- 安全衛生教育(新規入場者教育)の実施
- 作業手順書・安全マニュアルの母国語版の配布
- 技能実習指導員によるOJT計画の説明と実施開始
技能実習の期間と段階
技能実習は以下の3段階に分かれています。
| 区分 | 期間 | 内容 |
|---|---|---|
| 技能実習1号 | 1年目 | 基礎的な技能の習得。1年目終了時に技能検定基礎級の合格が必須 |
| 技能実習2号 | 2〜3年目 | より実践的な技能の習熟。3年目終了時に技能検定3級の受検が必須 |
| 技能実習3号 | 4〜5年目 | 熟達した技能の習得。優良認定を受けた監理団体・企業のみ移行可能 |
技能実習2号から3号への移行には、監理団体と受入れ企業の双方が「優良」の認定を受けている必要があります。監理団体選定の段階で、3号移行の可能性も考慮しておきましょう。
建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録は必須
建設業で技能実習生を受け入れる場合、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録は避けて通れません。国土交通省の方針により、建設分野の外国人材を受け入れるすべての企業に対して、CCUS登録が義務付けられています。
CCUSで必要な登録
- 事業者登録:受入れ企業自体の登録。建設業許可情報や社会保険加入状況を登録
- 技能者登録:技能実習生一人ひとりの情報登録。本人情報・保有資格・社会保険番号等を登録し、ICカードを発行
- 現場登録:実習を行う建設現場ごとの登録
CCUSへの事業者登録には登録料(資本金に応じて6,000円〜240万円)がかかります。中小規模の建設会社であれば数万円程度が一般的です。技能者登録は1人あたり2,500円です。
CCUS登録を怠ると、技能実習計画の認定が受けられないだけでなく、元請企業から現場への入場を拒否される可能性もあります。事業者登録は技能実習計画の申請前に完了させておく必要があるため、ステップ1の段階から準備を進めることをおすすめします。
よくある失敗パターンと対策
技能実習生の受入れでは、準備不足やコミュニケーション不足が原因で問題が生じるケースが少なくありません。ここでは、建設業でよくある失敗パターンとその対策を紹介します。
失敗1:スケジュールの見積もりが甘い
「来月から人手がほしい」と急ぎで受入れを進めようとするケースがありますが、前述の通り最短でも6か月はかかります。書類の不備による差戻しや、入管の審査遅延も珍しくないため、受入れ希望時期の8〜10か月前から動き始めるのが理想です。
失敗2:宿舎の準備が不十分
技能実習生の宿舎は法令で基準が定められています。1人あたりの居室面積(4.5平米以上)、プライバシーの確保、生活必需品の整備などを満たさないと、技能実習計画の認定が下りません。また、劣悪な住環境は実習生のモチベーション低下や失踪の原因にもなります。入国前に十分な住環境を整備しましょう。
失敗3:安全教育の不足
建設現場は危険と隣り合わせの職場です。日本語が十分でない技能実習生に対して、通常と同じ安全教育だけで済ませてしまうと、重大な事故につながりかねません。母国語の安全マニュアルの作成、写真やイラストを多用した視覚的な安全教育、ベテラン職人とのペア制度など、言語の壁を考慮した安全対策を講じることが不可欠です。
失敗4:既存社員への周知不足
技能実習生が現場に入る前に、既存の社員や職人に対して受入れの目的・背景を説明しておくことが重要です。「なぜ外国人を受け入れるのか」「どのように接すればいいのか」が共有されていないと、現場でのコミュニケーション不全や人間関係のトラブルにつながります。受入れ前の社内説明会の実施を強くおすすめします。
失敗5:技能検定への対策不足
技能実習1号から2号への移行には、技能検定基礎級の合格が必須です。不合格の場合、帰国しなければならなくなり、それまでの投資が無駄になります。実習開始後すぐに試験対策を始め、計画的に学習の時間を確保しましょう。
2027年の「育成就労制度」施行に向けて
2027年4月に、現行の技能実習制度に代わる「育成就労制度」が施行される予定です。この新制度は、従来の「国際貢献」という建前から「人材育成と人材確保の両立」へと目的を転換するもので、建設業にも大きな影響を及ぼします。
育成就労制度の主な変更点
- 転籍(転職)の柔軟化:一定の条件を満たせば、同一業種内での転籍が可能に。従来は原則として転籍不可だった
- 在留期間:基本3年。特定技能1号への移行を前提とした制度設計
- 監理団体の名称変更:「監理支援機関」として、より手厚い支援が求められる
- 受入れ対象分野の見直し:特定技能の分野と統一される方向
現在の技能実習制度のもとで受入れを開始しても、制度移行の経過措置が設けられる予定ですので、すぐに受入れが無効になることはありません。ただし、今から受入れを検討する企業は、育成就労制度の動向を把握したうえで計画を立てることが重要です。
特に、転籍の柔軟化により「受入れ企業の魅力」が問われる時代が到来します。給与水準・福利厚生・キャリアパスの明確化・職場環境の改善など、外国人材に「選ばれる企業」になるための取り組みが、今後の人材確保の鍵を握ります。
まとめ:計画的な準備が受入れ成功の鍵
技能実習生の受入れは、監理団体の選定から実習開始まで約6〜8か月のプロセスを要します。建設業では、CCUS登録やJAC加入など業界特有の要件もあり、準備すべきことは多岐にわたります。
この記事のポイントを最後に整理します。
- 受入れの全体スケジュールは最短6か月、一般的に7〜8か月。余裕をもった計画が重要
- 監理団体の選定が受入れの成否を左右する。建設業の実績・費用の透明性・トラブル対応力を重視して選ぶ
- 建設キャリアアップシステム(CCUS)への事業者登録は技能実習計画申請前に完了させる
- 宿舎の整備・安全教育の充実・既存社員への周知など、受入れ体制の準備を入国前に完了する
- 2027年4月の育成就労制度の施行を見据え、最新の制度動向にもアンテナを張っておく
- 初めての受入れは不安が多いもの。経験豊富な監理団体や専門家に相談しながら進めることが成功への近道
建設業の人手不足が深刻化するなか、外国人技能実習生の受入れは有力な解決策の一つです。この記事で解説した流れと注意点を参考に、ぜひ計画的な受入れ準備を進めてください。